イデア
私は幼い頃ぎっちょだったそうだが,今は一部の行為を除いて基本的に右利きで,文字も右手で書く.このあいだ黒板に左手で鏡文字やπ回転させた文字を書いてみたところ,これが意外にも慣れていない脳トレ的な意味でおもしろいことを発見したので,慣れない程度に遊んでみた.
文字を書く作業は,文字の形というよりも手の運動を記憶している感覚があって,それを基本的には裏切らない結果だった.実際,左手で正しい文字を書くことよりも,左手で鏡文字を書く方が容易だった.鏡映対称な操作は普段慣れているからだろう.文字の形を見ても,左手で書いた鏡文字は,左手で書いた普通の文字よりも,右手でいつも書いている文字に近い形をしていた.左手で鏡文字を書くときは右手の運動をそのまま裏返している感覚だが,左手で正しい文字を書くときは,頭の中にある文字のイメージを参照しに行く必要があって,おかげで普段書いている文字と記憶の中にある文字の乖離が見えておもしろい.たとえば「て」という文字は普段は簡体字の言偏「讠」の点を取ったものの角を落としたようなものを書いているが,頭の中にあるイメージはアラビア文字の hā 独立形「ح」に近い.左手で正しい文字を書こうとすると,それが見えてくる.
あと,左手でπ回転させた文字を書くことは,左手で普通の文字を書くことよりも容易であった.たぶんこういうこと(d:id:q4a:20100206:1265458194)をし慣れているためだろう.右手でのπ回転はできなかった.